「私が日本の演劇シーンに貢献出来たことがあるとしたら、それは何よりもまず、杉本佳一を舞台音楽へと押し出したことだろう。 宮沢章夫の遊園地再生事業団、宮沢直系の弟子である今野裕一郎率いるバストリオ、両劇団に提供した楽曲群から成る本作には、杉本佳一という音楽家の驚異的なまでに幅 広いスタイルと、多様なエモーションを見事に描き出す音像意識と、どの曲を取っても劇伴音楽とは完璧に一線を画す卓抜な構成力と、本能的かつ理性的な楽曲 センスとが、所狭しと横溢している。 私はこれらの音たちが鳴り響く舞台を全て観てきた。その上で断言しよう。ここにあるのは、完全に独立した音楽である。もちろんそれぞれの公演作品の記憶が、ことごとに思い出されはする。しかしそれらとは無関係に、このサウンドは屹立し、充実し、冴え渡り、豊かに たゆたっている。 まったく、なんて才能なんだ、杉本君、君の音楽は素晴らしい。」 佐々木敦
FilFla、FourColor、Vegpher、Minamo、Fonica等、さまざまな音楽スタイルを提示してきた数々のサウンド・プロジェクトにて日本のみならず、ワールドワイドで活動してきた杉本佳一。 これまでも数多くの映画/映像、エキシビジョンへの楽曲提供・制作、CM/web/企業VPのような広告音楽を手掛ける中、最近では演劇の音楽も手掛けて来ている。 F/T11のフェスティバル主催作品であった遊園地再生事業団の『トータル・リビング 1986-2011』の音楽担当を皮切りに、今や杉本の音楽が欠かせない存在となったバストリオの諸作品、今年上演されたマームとジプシーの『ΛΛΛ かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと----------』にはFilFlaの『Frolicfon』収録曲「WST」が重要なパートで使用される等、演劇界からも注目される存在となった。 キャリア初の本人名義で発売される本作は、杉本がこれまで提供して来た演劇用の音楽を厳選して、CD2枚組にパッケージ化した作品。 劇判用の音楽にも拘らず、これまでの杉本が関わって来た音楽プロジェクトのさまざまな要素が凝縮し、彼の音楽的ポテンシャルの高さを遺憾無く発揮した、CDのみでも十分に楽しめる内容となっている。
PHOTO : 『Very Story, Very Hungry』/バストリオ © Toshiyuki Matsushita
FilFla、FourColor、Vegpher、Minamo、Fonicaなどの名義で作品を発表してきた杉本佳一。初めて本名名義でリリースされる同作は、宮沢章夫主宰の遊園地再生事業団による『トータル・リビング 1986-2011』に提供した楽曲をはじめ、バストリオによるパフォーマンス作品やマームとジプシー『ΛΛΛ かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと----------』に提供した楽曲など、舞台音楽を収めた作品集となる。収録楽曲は宮沢章夫が作詞を担当し、Moskitooがボーカルで参加した“Curtain Call”、バストリオの今野裕一郎が作詞を手掛け、名児耶ゆりがボーカルで参加した“リンダ”など全53曲を収録した。
アーティスト:Keiichi Sugimoto(杉本佳一)Sound Sample :
『PLAY MUSIC』A盤
『トータル・リビング 1986-2011』
『Rock and Roll あなたにとって大切なのはココロ』
『Very Story, Very Hungry』
『点滅、発光体、フリー』
『グッドバイ』
『夏の終わりの妹』
『光のない。(プロローグ?)』
『ΛΛΛ かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと----------』
日程:2011年10月14日(金)̶ 10月24日(月)
15ステージ
会場:にしすがも創造舎
PHOTO : © Nobuhiko Hikiji
日程:2012年1月27日(金)̶ 2月1日(水) 8ステージ
会場:新宿眼科画廊
PHOTO : © Toshiyuki Matsushita
日程:2012年8月29日(水)̶ 9月2日(日) 7ステージ
会場:BankART NYK NYKホール
PHOTO : © Toshiyuki Matsushita
日程:2013年2月7日(木)̶ 2月11日(月・祝) 8ステージ
会場:横浜黄金町 nitehiworks
PHOTO : © Rica Kagaya
日程:2013年7月3日(水)̶ 7月6日(土) 8ステージ
会場:清澄白河 SNAC
PHOTO : © Toshiyuki Matsushita
日程:2013年9月13日(金)̶ 9月22日(日)
14ステージ
会場:あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)
PHOTO : © Nobuhiko Hikiji
日程:2013年11月30日(土)̶ 12月8日(日)
10ステージ
会場:東京芸術劇場 シアターウエスト
PHOTO : ©Tsukasa Aoki
[東京公演]
日程:2014年6月8日(日)̶ 6月22日(日) 18ステージ
会場:東京芸術劇場シアターイースト
[北海道公演]
日程:2014年6月28日(土)̶ 6月29日(日) 3ステージ
会場:だて歴史の杜カルチャーセンター
PHOTO : ©Tomofumi Hashimoto
Comments for PLAY MUSIC
宮沢章夫さん(遊園地再生事業団)
それまで杉本君が演劇についてどんなふうに感じていたかゆっくり話したことがない。演劇のことをよく知っていたのだろうか。そんなふうには見えなかった。けれど、初めからあたりまえのように、「非演劇的」な音楽を作ってくれたのは不思議な気持ちになった。熱心に稽古場に足を運んでくれた。そうした共同作業は必要だとしても、「演劇」という言葉に縛られることで、ややもすると劇的になる可能性はあったはずだが、そんな陥穽からも逃れ、あるいは、そのこと、つまり劇的に、ドラマチックになってしまうことから逃れようと意図するあまり作為的になることもなかった。舞台を前提としなくても充分に成立する場所で、まさに〈音楽〉としてあることが、私の作品にとっても、〈いい音〉として響いた意味ではなかったか。私の作品だけではなく、バストリオや、すでに発表されていた既存の楽曲だったが、マームとジプシーが使用した音楽も、演劇の側がなにかを喚起されている。杉本君の音楽を聴いたから、わたしたちのからだはそのように動いた。いや、それは、音楽にうっとりする俳優が、そのことに酔ってからだを動かす、ばかなあれとはまったくちがう。演劇と音楽のあいだに生まれる特別な関係だ。
今野裕一郎さん(バストリオ)
『PLAY MUSIC』のなかには様々な場所で鳴り響いた音楽があります。
俺にとってはすごく私的なこのアルバム。
聴くたびに、顔、身体、声、運動、物、匂い、光、影、風景、、、そして想いが 蘇ってくる。
ほんと、言葉にできないことだらけなんだけど、
思い浮かぶのは杉本さんと一緒につくってきた作品のことばかり。
いつだって音楽をかけると、すべてに光が当たるような気持ちがあった。
いい音が溢れています。ジャケットもかわいい。CDっていいなあ。
杉本さん、これからも楽しみましょうね。
藤田貴大さん(マームとジプシー)
「WST」を聴いた瞬間、あのころのぼくと、げんざいのぼく、
そして、ここにたしかにある空間がつながったのだった。
それはぼくしか持つことができなかったはずのぼくの記憶が、
ぼくじゃないだれかへ、ひらかれていくようなあたらしい感覚だった。